トイレ掃除で金メダル?掃除の神様

お掃除の方法ではありせんが、掃除の神様についてのお話はいろんな人たちがいろんな逸話を伝えていると思いますが、ここではこんなお話を紹介します。ぜひお掃除気分のモチベーションアップにお役立てください。

 

(~引用~)
便所掃除して金メダルをとった田口信教(たぐちのぶたか)
平泳ぎ選手、五輪に3回参加、ミュンヘン大会百メートルで金メダル。
1951年6月18日愛媛県生まれ

 

勝負とは不思議なものだ。
例えば水泳のゴール前のデッドヒートで、タッチの差で勝つ者と負ける者がいる。
両者に実力の差はほとんどなくても、栄光の座をつかむ人物はひとりしかいない。

 

21歳の田口信教選手(広島商大)は、1972年ミュンヘン・オリンピックの平泳ぎで、どうしても勝ちたかった。
だが、世界は広く、金メダルをとっておかしくない実力の持ち主が何人かいた。
「どうやったら、彼らに確実に勝つことができるだろうか」

泳ぐスピードは1秒間に2メートル弱だ。
最近は電気計時だから、一団となってゴール前になだれ込むレースは、百分の1秒で勝負が決まることがある。2メートルの百分の1は、たった2センチだ。
その2センチの差が、金と銀という天と地ほどの価値の違うものに分ける。
2センチは指1本以下の差であり、2度やって2度勝てるほどの差ではない。
それはもう「運命」としかいいようがない。

1984年ロス五輪の女子百メートル自由形決勝は、アメリカの2人の選手が55秒92と、百分の1秒まで同タイムでゴールし、金メダルを分けあった。
これは奇跡に近いことであり、宝くじ以下の確率であろう。

水泳の実力は、毎日どれだけ泳いだか、にかかっている。
田口選手は毎日1万メートル練習していた。
記録的には金メダルがとれそうな感触をつかんでいた。

だが、本当のところどうやったら4年に一度しかないチャンスに、確実に2センチ以上の差をつけることができるか。
どうしたら幸運がやってくるのか。
田口選手は2センチの意味、そして「運命」とは何か、「オリンピックの金メダル」とは何かを考えた。

彼なりのひとつの結論は、友人のいやがることを率先してやろう、便所掃除であれ、炊事洗濯であれ、友だちづき合いであれ、みんながやる共同作業を絶対に怠けず、進んでやるということだった。

共同作業を率先してやっても、水泳に直接プラスになるとは限らないかもしれない

だが、人が見ていて、同じ実力で、同じように努力し、同じようにスタートしたとき、人に親切で協調性があり、なおかつ人のいやがる作業を率先してやる人間と、水泳しかやれない人間とどちらを勝たせたいか。
便所掃除なんかするよりも昼寝でもしているほうがいい、という人を勝たせたくないのが人情ではないか。

授業にもきちんと出て、約束を守り、友達づき合いもいい人間は、世間一般の人も、あいつは勝って当然、あんな人間を勝たせてやりたいと思うのではないか。

そんな人間は、神様も見捨てておかないだろう。
運のつく選手とは、そんな人のことをいうのではないか。
そんな人間になりたい。
(以下略)

(出展「スポーツ人間ちょっといい話」中条一雄 朝日新聞社)

 

トイレ掃除で有名な北野武も付き人時代からトイレ掃除だけは欠かしたことがなく、映画のロケ地近くの公園のトイレまで磨くそうです。「たいして、何にもしてないけど、ギャグは受け、映画はヒットする。一つだけ続けていることはトイレ掃除だ」と1回だけテレビで話したのは伝説となっています。

不思議なことを信じなくても、きれいになって得があるかもなんて、素敵ですね。